製薬企業が市場の拡大をにらんで「肥満症薬マネー」をバラ撒いている。世界で将来的に1000億ドル市場(15兆円)に成長すると予想される肥満症薬。日本ではノボノルディスクファーマが2月に「ウゴービ」(一般名=セマグルチド)を発売して先陣をきった。発売に備えたノボの戦略は巧妙だった。新薬の開発を通して専門医を取り込むのはもちろん、学会で治療ガイドラインを整備してもらうと、新たに「肥満症」という疾患概念を広めて巨大市場の下地をつくった。
本誌が調べたところ、日本肥満学会が治療ガイドライン(GL)を発表した22年度に、ノボは学会へ計1050万円の寄附金を提供。また、GLを作成した医師らにも講師謝金やコンサルティング料の名目で100万円を超えるカネを支払っていた。巨大市場が形成される裏側で肥満症薬マネーが医療界を侵食している。